2009年5月25日月曜日

第5回議事録 —中編

前編に引き続き
「地元の昔話、興味を持っている地域の神話、宗教の聖典にみられる訓話」
について。
次は糸長さんが、変わった面白い話をしてくれました。


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糸長さん:「ロミオとジュリエット?」

原作/藤子・F・不二雄、画/小森麻美
「宇宙人レポート サンプルAとB」
「気軽に殺ろうよ!」「SF短編PERFECT版 4」などに収録)

藤子F先生が原作のみで、絵は少女マンガという異色作。視点は藤子チック。
たしかに、かの有名なラブストーリー「ロミオとジュリエット」ではあるのだが、シュールで最後は考えさせられる話になっている。

はじまりは、宇宙人から見た地球の話。
人間とはなんであるかというのを、宇宙人の視点から見ているのだが、宇宙人が人間という生命体を観察するにあたって、観察対象を決定する。
そのサンプルが「サンプルA」=「ロミオ」と「サンプルB」=「ジュリエット」というわけ。
内容はロミオとジュリエットなのだが、感動の涙がたまるシーンも「受光孔(目?)が大きく開かれ・・・・・」というように、科学的目線でとらえられてしまう。
ラストは、「人間の愛とか心とはなんなんだ」という切ない終わり方。



「宇宙人レポート サンプルAとB」と考え方が近いお話:
・マネキンを使った人形劇「オー!マイキー」(youtube参照
・ホットペッパーのCM(youtube参照
→物語の絵と内容(ふきかえ)とをすり替え、新たなストーリーをつくる

「話の外に、もう一つの話で囲む」という面白い構成の物語でした。
短いお話ですし、短編集に入っていたその他の話も面白そうだったのでSF好きはぜひ。


次は、小野さんが民話を紹介してくれました。


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小野さん:「カンボジアの民話/欲張りな人」

「金の斧、銀の斧」と似ている構成ですが、結果が逆になるというお話。

お母さんが、芋掘りを娘に頼みました。
娘が芋を掘りに行くが、掘っている最中、クワの歯を深い穴に落としていしまいます。
困っているところに、怪我を負った虎がやってきました。どうやらその怪我は、以前負った怪我らしく、手当をしていないため、傷口にウジ虫がたまっていました。
虎は、女の子がクワの歯を落として困っているのをみて、「ウジ虫を傷口からとってくれたら、私がクワの歯を持ってきてやろう」といいます。
女の子はクワの歯をとってもらえるということで、虎の傷口にいるウジ虫をとることにしました。
ウジ虫をとっていると、虎は「傷口は臭くないか?」と女の子にしつこく聞いてきます。
たしかに傷口はとても臭かったのですが、女の子は「とても良いにおいよ」とうそを言います。
そして、ウジ虫を取り終え、クワの歯を取ってきてもらい、無事女の子は芋を掘ることができました。
芋をカゴに入れるときに、虎が「私がカゴに入れてあげよう」といって、芋を入れるのと同時に金銀をカゴに入れました。
女の子には、「家に帰ってしっかり戸締まりをしたあと、家族そろっているときにカゴを開けなさい」と念を押して言いました。
女の子が家に帰って、言われた通りにすると、カゴには金銀が入っていて、その家族は貧しさから逃れられました。

さて、それを聞きつけた別の家にお母さんが、自分の娘にも同じことをさせました。
同じように芋を掘りにいき、クワの歯を穴に落とすと、傷を負った虎がでてきました。クワの歯を取ってくる代わりにウジ虫を取ってくれと言われたので、女の子は傷口のウジ虫を取り始めます。
すると、同じように虎がまた「傷口は臭くないか?」としつこく女の子に聞いてきます。今度の女の子は、正直に「とても臭いわ」と言ってしまいます。
虎は、芋をカゴに入れてあげる時、たくさんのコブラも一緒に入れました。
その後、同じように「家に帰ってしっかり戸締まりをしたあと、家族そろっているときにカゴを開けなさい」と虎が言ったので、女の子は言われた通りにすると、コブラがでてきて、その女の子の家族はみんな死んでしまいました。
最終的な終わり方は「欲張ってはダメですよ」という教訓でおわる。


内容が似ている「金の斧、銀の斧」とは、正直者と嘘つきの結果が違う。
カンボジアの民話は、「優しい嘘」?


粟野先生:
臭いと正直に言う→思いやりの正直さ 親が子どもに教える感じか
良いにおい!と言う→偽善的ではないか?と思った

または、「良いにおい!」と言った女の子は臭いにおいフェチだった?(笑)


においフェチについては置いておいたとしても、正直者と嘘つきの結果の差がこうまで違うとどちらが本当の道徳なのか混乱する。



この話には別の意味があるのではないか?


小野さんからの補足:
カンボジアでは、「虎=強者の象徴」という意味がある。

ということは、つまり権力には従っておけという戒め、
表向きは「欲張りすぎてはダメ」という教訓と見せかけた世渡り術なのではないか?


日置さん:
戦時中(内戦中?)のカンボジアでは「学校に行っていました」「英語がしゃべれます」と言う人は、殺されてしまっていた。(政府に逆らう可能性のある芽はつむいでおくということだと思われます)
=この「正直者と嘘つきの結果の差」は土地柄では?

またこの話をする場所にもよるのではないか。
母から子へ/寺院などでの言い聞かせ。

虎=強者 からの 「褒美」=金銀/「制裁」=コブラ



その土地の歴史が、民話には色濃くにあらわれているというのがよくわかりました。

さて次も民話ですが、今度の民話は椙田さんの地元の埼玉県飯能市のお話。


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椙田さん:「埼玉県飯能市に伝わる話/近親者殺し」

2人の兄弟がいました。兄は目が悪く、弟が仕事や身の回りのことをして生活していました。
食事のとき、弟はいつも「おいしいおいしい」といって食事をします。
兄は目が見えないので、いつもおいしいという弟の食事は、もしや自分とは違うもっと良いものを食べているからおいしいと言っているのではないかと疑いはじめます。
ある日、疑い続けた兄が、「お前は俺より美味しいものをくっているからおいしいと言うんだろう!俺を騙したな!」と言うと、弟はショックをうけ、兄に「では、喉を裂いて確かめてみればいい」と言います。
喉を裂けと言われた兄が言われた通りに弟の喉を裂くと、弟は麦飯や芋の皮を食べていたことがわかりました。
弟は少しでも兄に良いものを食べてもらおうとして、自分は粗末なものしか食べていなかったのです。
それを知った兄は、弟を助けようとしますが、弟は帰らぬ人になってしまいました。
悲しんだ兄は、泣き続けてホトトギスになってしまいました。

「近親者を殺してしまう」という部分に着目:
森鴎外の「高瀬舟青空文庫で読む)」
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟
これらも似た要素を持っていることに気づく。
弟などを近親者を殺すことはタブーなので物語になりやすいのではないか。


この兄弟の話は民話なのでつっこみどころが多い気がしますが(笑)
「タブー」という要素は物語が盛り上がりやすいとともに、
「近親者殺し」=「異常者」ということにもなるのでしょうか。


さて次は折原さん。
只今調べ中ということで、アラブ系物語について少し語ってもらいました。



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・折原さん:「アラブ系物語について」



アラブ系物語の起源についての予想:

「アラジン」のようにファンタジーのイメージが強いアラブ系の物語であるが、
イスラム教は一神教ということで、偶像をつくることが禁止されていたため、
文字や模様などにして神をあがめるというのが物語の背景にあるのではないか?


アラブ系物語というと、「アラジン」のディズニーのイメージしかないが、イスラム教が背景にあって神を物語に反映しているのではという考えは面白いですね。


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